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競走馬の進路③ホースセラピー

時速60kmで走る競走馬たちが、なぜ引退後に人を癒やすことができるのでしょうか。ホースセラピーの仕組みから、福祉や教育現場での転身の実例、そして私たちの応援が彼らの未来を直接支える仕組みまで解説します。

ホースセラピーと癒し

レース場で時速60km以上の猛スピードで駆け抜けていた競走馬たちが、引退後にその強さではなく、優しさやぬくもりを活かして活躍する場所があります。
それがホースセラピーと呼ばれる馬術療法の世界です。


近年、引退馬の新たなセカンドキャリアとして、そして人と馬の新しい共生の形として、世界中で大きな注目を集めています。


ホースセラピーとは

嬉しそうに交流する人馬
ホースセラピーとは、馬と触れ合ったり、乗ったりすることを通じて、人々の身体的・精神的な機能回復や、社会性の向上を目指すアニマルセラピーの一種です。


なぜ、数ある動物の中で馬が選ばれたのでしょうか。


その理由は、馬の持つ独特の身体の仕組みと気性にあります。
馬の体温は人間よりも約1度高く、触れるだけでじんわりとした心地よい温もりが伝わってきます。


また、馬の背中に揺られるときの振動は、人間の歩行時の骨盤の動きと非常によく似ていると言われており、乗っているだけで自然と体幹が鍛えられ、リハビリテーションとして高い効果を発揮します。


余生を乗馬クラブで送る馬たち



そして何より、馬は非常に感受性が豊かで、人間の感情を敏感に察知する動物です。
言葉が通じなくても、そっと寄り添ってくれるその存在そのものが、傷ついた心やストレスを抱える現代人の大きな癒やしとなります。


元競走馬たちの転身

あんなに激しく走っていた競走馬が、セラピー犬のように人を癒やすことができるのか?と疑問に思う方もいるでしょう。
確かにレースの世界にいた頃の彼らは、一着を目指すための強い闘争心を求められていました。


しかし、現役を退き、リトレーニングを経て人の優しい愛情に触れるうちに、彼らの内面にある本来の穏やかさや人懐っこさが戻ってきます。


かつて競馬場を沸かせた名馬たちが、セラピーの現場では子供たちの小さな手を優しく包み込むようにじっと佇み、障がいを持つ方のリハビリをじっと辛抱強く支える姿は、関わるすべての人に深い感動を与えます。


スピードを競う世界から、存在そのもので人を幸せにする世界へ。
このダイナミックな転身こそが、引退馬が持つ無限の可能性を証明しているのです。


福祉や教育の現場で広がる馬と人の新しい絆

福祉の現場で働く馬たち
現在、ホースセラピーの活躍の場は多岐にわたっています。


例えば、障がいを持つ子どもたちの心身の成長を促すための児童発達支援、不登校や引きこもりといった課題を抱える若者たちのメンタルケア、さらには高齢者施設でのレクリエーションなど、社会の様々な場所で引退馬たちが活躍しています。


馬は人間の肩書きや過去を気にせず、ただ目の前にいる自分をそのまま受け入れてくれます。
この無条件の受容が、現代社会で生きづらさを抱える人々の自己肯定感を高め、次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのです。


引退馬は、競馬ファンだけでなく福祉や教育に携わる人々にとっても、なくてはならない貴重なパートナーとなりつつあります。


私たちがセラピーを通じて引退馬を支える方法

ホースセラピーのイベントに大勢の人が押しかける様子
ホースセラピーの拠点を応援することは、私たちにできる非常に身近で持続可能な引退馬支援の形です。 
セラピー牧場へ足を運んで体験プログラムに参加したり、牧場が運営するイベントに参加したりすることは、そのまま馬たちの飼育費や医療費、そして新しい引退馬を迎え入れるための資金へと還元されます。


また、近年では見る競馬から触れ合う馬活へシフトするファンも増えています。
かつて応援していた馬がセラピー馬として頑張っている姿を優しく見守り、その活動を周囲に広めていくことも立派な支援です。


馬が人を癒やし、人が馬の生活を支える。
この美しい循環が、これからの引退馬問題を解決する大きなヒントになるでしょう。